魯山人と夫たちが山代温泉で静かに酒を楽しんでいた。九谷焼は加賀の伝統工芸品で、加賀藩支藩大聖寺藩の命により始まった歴史を持つ。魯山人は九谷焼に魅せられ、福田大観として知られる書道家であり、九谷陶芸家から指導を受け成功した。山代温泉に深いつながりがあり、彼の作品が展示されている「いろは草庵遺跡」も存在する。九谷焼の物語を伝える九谷焼炉跡展示館では、楽しい体験ができる。
加賀の伝統工芸品、九谷焼。 その歴史は江戸時代初期、加賀藩支藩大聖寺藩の命により九谷村(現山中温泉)で焼かれたことが始まりです。 その後廃却となりましたが、約1世紀を経て再興されました。
九谷焼に魅せられた人物の一人が、当時福田大観と名乗った才能ある書道家で篆刻家でもあった北大路魯山人です。 魯山人は金沢の漢学者細野円台の常連客となり、山代温泉の夫たちと知り合い、吉野家旅館の別荘で看板彫刻の仕事を始めました。 その跡が「廬山人外京いろは草庵遺跡」です。
館内には魯山人の看板制作などを行った仕事場が再現され、魯山人の作品が展示されています。 魯山人は山城の九谷陶芸家・須田清華氏に指導を受け、陶芸の基礎を学び、後に陶芸家として成功しました。 展示を通じて山代温泉と魯山人の深いつながりを知ることができます。
いろは草庵 魯山人邸跡
石川県加賀市山代温泉18-5
0761・77・7111
開館時間:午前9時~午後5時(入場は午後4時30分まで)
定休日:水曜日(祝日の場合は営業)
入場料:560円
交通:JR加賀温泉駅よりタクシーで約10分
窯跡が語る九谷焼の物語
再興九谷の中でも、吉田屋窯(再興九谷)と呼ばれる窯は、文政9年(1826年)に山代温泉に移築されました。「九谷焼窯跡展示館」には、国の史跡であった巨大な登り窯の跡が保存されています。 10 年以上にわたる発掘と研究を経て、2002 年に一般公開されました。 発掘当時の姿をそのままに、建築家・内藤廣氏による最新の技術で建てられた屋根で守られています。
また、現存する最古の1940年築の九谷焼窯が保存されており、壕内の窯も同様の構造であったと想像できます。 工房兼展示棟には九谷焼の歴史とその道具が展示されています。 構造や温度の異なる3種類のオーブンによるトリプル調理や、赤・黄・青・緑・群青・紫の5色を使った焼き方も学べます。 温泉地で培われてきた伝統の技を体験して旅を締めくくりたい。
九谷焼窯跡展示館
展示棟では特別作品展示が行われるほか、体験工房では絵付けやろくろ体験ができます。
石川県加賀市山代温泉19-101-9
電話:0761・77・0020
開館時間:午前9時~午後5時(入場は午後4時30分まで)
定休日:火曜日(祝日の場合は営業)
入場料:350円
交通:JR加賀温泉駅よりタクシーで約8分。
取材・文:関谷順子 撮影:藤田修平
※この記事は『サライ』2024年4月号より転載しています。